大町の家
Omachi House

普通のちょっと古い空き家のリノベーション

この家は近くにある高校の歴代の校長先生が暮らしていた宿舎でした。しかし築年数が40年を過ぎ、設備も含めた性能が劣ってきたこともあって近年は使われずに空き家となっていました。そして民間へ払い下げられたことをきっかけに、住宅としてリノベーションをすることになりました。

この家は、学校や役所、公園やショッピングモールなど生活に必要な施設に近い利便性のよい場所にあります。反面、開けた眺望はなく開放的な場所ではありません。そのため、内部空間に広がりを持たせることを意識した設計としました。
平屋なので、天井を撤去して屋根の骨組みを現しにすることで気積を大きくすることができました。その気積を活かすために中央に置いたお風呂やトイレ、収納が入ったボックスの上部をロフト状にして空間に奥行き感を与えています。また、そのボックスの周囲をぐるっと回れるようにすることで動線的にも広く感じられ、かつ機能的なプランとなるようにつくっています。

中央のボックスは古材の板張りとしていますが、この板は元々この家の畳下に張られていた床板を再利用しています。
外周の壁はグレー色とし、スイッチ・コンセント、水洗金物やドアノブから家電も含めてグレー・ブラックで統一しています。
昔のままの屋根の骨組みや古材の板張りとピカピカの新しい仕上げを対比させるのではなく、グレー系の色合いとして馴染ませることを意図しています。

普通の空き家も改修の仕方次第で魅力的な家に生まれ変わります。
新築だけではなく空き家の改修も住まいの選択肢として増えていってくれればと思います。

写真:中村晃