俵屋
Tawaraya

お店の活気はまちの活気

ひっきりなしに続くオーダーを通す声、中華鍋をガツガツ振る音、どんどんテーブルに並ぶ湯気立つ料理、美味しそうに餃子を頬張るお客さんの顔。
俵屋の売り物は当然「俵屋の餃子」に代表される料理なわけですが、もっと俯瞰的に見てみると、お店に満ちている「活気」こそが最大のコンテンツなのではないかと感じていました。
この活気をお店の中だけに閉じ込めてしまうのは非常にもったいない。
活気がまちに漏れ出ていくような状況をつくることができれば、お店の建て替えだけにとどまらない、まちにとっても価値を持ったプロジェクトになるのではないか。
そんなことを考えながら計画した大町の老舗「俵屋」の建て替え計画です。

アーケードに対して目一杯に大きな木製建具を設けました。お店の賑わいが外からもよく分かります。さらに建具は開け放つことができます。気候のよい季節、商店街で催される様々なイベント時など、夜市の屋台のようにお店とまちが一体になります。
新しくてきれいなことよりも、まちに馴染むことを意図しているため、仕上にはムラがあったり経年変化するような材料をあえて使用しています。モルタルや無塗装の鉄、木毛セメント板など。
また、随所に以前のお店の面影も残しています。行灯として再生した看板、幅3m近くあるメニュー表、中華と言えばの丸テーブル、欄間や障子などなど。家具に多用した赤色もそうです。
ロゴマークも旧来のものを活用しています。

それ以外にも、敷地の真ん中を流れる水路を建物がまたいでいたり、奥にはモダンな宴会場があったり、見どころ満載です。

ひとつのお店が持つまちに対する可能性、商店街の中で老舗を建替えることの意味など、いろんなことを感じたプロジェクトです。

大町のソウルフード「俵屋の餃子」をぜひ食べにきて下さい!

写真:中村晃